10月7日にご案内いたしました国内事前会合につきまして、各セッションの概要をご案内します。イベントの詳細につきましては、以下URLをご参照ください。
https://japanigf.jp/topics/igf-2021
なお、以下リンクから参加申込が可能です。皆様のご参加をお待ちしています。
https://us06web.zoom.us/meeting/register/tZcrfu-qpjgqG9yDv7wz0IgPCRN9hFi-nvgF
なお、本会合は、2021年5月より、日本におけるインターネットガバナンスの議論を活発にするべく活動している「IGF 2023に向けた国内IGF活動活発化チーム」の活動の一環として開催されるものです。活発化チームの活動状況につきましては、次のURLをご参照ください。
https://japanigf.jp/topics
お問い合わせ等連絡先:sec@japanigf.jp
[M]:モデレーター ※なお、発表者は予告なく変更になることがあります。
■Day 1: 2021年10月27日(水)16:00-19:00
16:10~17:00:D1-1 サイバー主権とスプリンターネット
~分裂するインターネットの現状と課題~
- [M]八田真行(駿河台大学経済経営学部)
- 高須正和(株式会社スイッチサイエンス)
- 佐々木将宣(総務省サイバーセキュリティ統括官室)
かつては「サイバースペース」として、物理的な現実世界とは切り離された単一の仮想空間であるとされていたインターネットは、インターネットの現実への影響力が増したこともあり、近年ではナショナリズムや宗教、経済といった様々な要因で国や地域ごとに分割された「スプリンターネット」へと変貌しつつある。
本セッションでは、ネット検閲回避技術に関心を持つ研究者や「サイバー主権」を旗印にネット規制を強める中国が拠点の登壇者を中心に、スプリンターネットがもたらす問題点や今後取り得る具体的な対応策について議論したい。技術と政治、文化や制度が交錯する領域なので、幅広い参加者にとって興味深いテーマとなることが期待される。
17:10~18:00:D1-2 脆弱性情報のガバナンス
~セキュアな製品をつくるための官・民・市民社会の取り組み~
- [M]伊藤智貴(一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター)
- 渡辺貴仁(独立行政法人情報処理推進機構)
- 明尾洋一(サイボウズ株式会社)
日々、インターネットを支えるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアには様々な脆弱性(セキュリティ上の不具合。セキュリティホールとも。)が発見されている。一般的に、脆弱性は研究者などによって発見され、開発者によって修正され、その対策が公表される。さらに、使用者によって対策が講じられなければならない。
近年、この脆弱性をめぐる情報の流れが複雑化している。一口に脆弱性と言っても趣味で作られたWebプログラムから、CPUまでその深刻度や影響範囲、そして対応に必要なステークホルダーの数はまちまちである。また脆弱性をサイバー攻撃に用いたい国家、脆弱性情報が取引される市場が現れ、国家安全保障上の関心も高まっている。
本セッションでは、まずCoordinated Vulnerability Disclosure(協調的な脆弱性の公開)と呼ばれる、長年に渡り国際的に主流であった規範と、日本においそれを支える諸制度の概要を紹介する。(スピーカー1)
次に、実際に製品の脆弱性を修正し、ユーザに対策を求める立場から、これまでの経験、そして昨今の変化、CVDの潜在的な問題点を指摘する。(スピーカー2)
これらを通して、セッション全体としては、インターネットを支える多くの要素同様に、脆弱性情報のガバナンスも技術だけでは解決できない課題を抱えていることを訴える。
18:10~19:00:D1-3 エンド・ツー・エンド暗号化:規制の動きと社会への影響
- [M]八田真行(駿河台大学経済経営学部)
- 星暁雄(フリーランスITジャーナリスト)
- 高村信(総務省サイバーセキュリティ統括官室)
分散的アーキテクチャを標榜するインターネットにおいて、エンド・ツー・エンド暗号化(E2EE)はその根本にある技術とされてきた。しかしインターネットの社会的影響が高まるにつれ、児童ポルノやハラスメントなどに政治的な対応が迫られることが増え、その一部はプライバシーやセキュリティの面でエンド・ツー・エンド暗号化の根幹を揺るがしかねないものとなりつつある。また、その背景としてプラットフォーマーの独占的な力が強まるなど、インターネットそのものの変質があることも見逃せない。本セッションでは、セキュア・メッセージングに関心を持つ研究者や最近のAppleの動きなど事例に詳しい登壇者を中心に、エンド・ツー・エンド暗号化への脅威とそれがもたらす問題点や今後取り得る具体的な対応策について議論したい。
■Day 2: 2021年10月28日(木)16:00-19:00
16:00~16:50:D2-1 日本におけるマルチステークホルダーでのインターネット政策対話の場を目指して
- [M]前村昌紀(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)
- [M]立石聡明(一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会)
- 飯田陽一(総務省国際戦略局)
- 加藤幹之(MK Next)
- 上村圭介(大東文化大学)
現在の「活発化チーム」の活動は、現在までの国内IGF活動の振り返りから始め、今までになし得なかったスケールで関係者を巻き込み、マルチステークホルダーによる、真にインターネット政策の立案に寄与する対話の場を目指しています。このような野心的な目標にどう立ち向かうか、課題と展望を話し合います。
17:00~17:50:D2-2 ネットワーク中立性:韓国 Netflix訴訟のインパクト
- [M]水越一郎(東日本電信電話株式会社)
- 実積寿也(中央大学総合政策学部)
- 趙章恩(KDDI総合研究所)
増加するOTTトラフィック費用負担を誰がするのかはネットワーク中立性での重要な論点である。2021年6月25日に韓国でNetflixがSKブロードバンドに対するネットワーク使用料支払い拒否訴訟第1審で敗訴した。本セッションはこの訴訟内容を振り返るとともにその影響について議論する。
18:00~18:50:D2-3 インターネットはいつまでも"Trusted"であり続けられるか
~海賊版サイトへの対応と「表現の自由」に関する日本での取り組み~
- [M]立石 聡明(一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会 副会長兼専務理事)
- 宍戸 常寿(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
- 森 亮二(英知法律事務所 弁護士)
- 池田 光翼(総務省消費者行政二課)
- 田中 恵子(京都情報大学院大学 准教授)
2018年、「漫画村」という海賊版サイトが問題となり、日本では政府が海賊版サイトをISPにブロッキング要請する可能性が出てきたため、出版社、法曹界、インターネット関連事業者等が、内閣府で大論争を行った。
日本国憲法においては、「表現の自由」や「通信の秘密」などが規定されており、これを侵すことは簡単ではない。しかし、この日本の民主主義を根底から崩しかねない事件が何故起こったのか。
国際的にも昨年あたりから、「ダイナミック・ブロッキング」なる新手法で、海賊版サイトをブロックするというニュースが流れており、スウェーデンを始めオーストラリア、インドなどでも新たに採用された、あるいは裁判所がOKを出したという報道を見る。
日本においては、「漫画村」そのものは自ら閉鎖され、その後犯人が逮捕されたことで、事態は沈静化されていたが、最近になって新たな海賊版サイトが増え始め、議論が再燃されようとしている。
今回、2018年に日本で起きたこの問題の背景と、ブロッキング賛成派及び反対派の意見や論拠、また日本における「表現の自由」や「通信の秘密」の法理論について他国との比較なども交えて披露したい。