日本インターネットガバナンスフォーラム2023 セッション要約

開催概要

全体テーマ:「IGF2023京都の国内事前会合」

開催日時

  • [Day 1] 2023年9月7日(木)13:30-17:00(ハイブリッド)
  • [Day 2] 2023年9月8日(金)11:10-14:30(オンラインのみ)

主催

  • IGF 2023に向けた国内IGF活動活発化チーム

 

Day 1

開会挨拶

開会にあたり、IGF2023に向けた国内IGF活動活性化チームチェアの加藤幹之氏は、2006年から始まったIGFの18回目が、今年、初めて日本で開催され、世界中からすでに3000人以上が参加登録しており、インターネットに関わる様々なテーマについて350以上のセッションが行われる予定で、今回はセッションを企画する日本の方に予告編として発表をしてお願いしているが、10月の京都でのIGFにもぜひ参加して欲しいと述べた。また、慶應義塾大学の村井純氏はビデオメッセージで、このパンデミックの3年で働き方や生活スタイルを含む、社会経済全体が大きく変わり、産業も生活も、インターネットに関わらないものは何もない。IGFはインターネット上で行われる日常生活を含むすべてに関して、それがどうあるべきか、オープンにすべての立場の人が議論する場であり、特に今年のIGF2023は、デジタル社会におけるインターネットの未来を考える、歴史的に重要なポイントと言えるので、この重要なタイミングでのIGFにぜひできるだけ多くの方に参加して欲しいと述べた。

 

日本におけるオンライン上の児童ポルノ対策-国連をはじめとする国際的観点から見た日本の対策の意義:法的、技術的等の観点から

1996年ストックホルムで開催された「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」で、日本の旅行客やビジネスマンが東南アジア諸国で児童ポルノを買っているのを、取り締まる法律どころか「買春」という言葉すらなかった日本が非難された。その後、紙媒体のものからインターネット上への規制について、長い年月をかけて様々な議論が行われ、児童ポルノ禁止法も2014年に改正された。対策としてはプロバイダが行うブロッキングとユーザが自ら行うフィルタリングがあるが、ブロッキングは、情報の検閲を禁止する憲法に違反する可能性があり、慎重な対応が必要であるが、インターネットコンテンツセーフティ協会(ICSA)では、オンライン児童ポルノに関する通報リストを作成し、削除等するための仕組みを持つが、国外のプロバイダでどうしても規制できない場合などは、リスクがあってもこれを児童ポルノに厳格に限定してブロックするなどの措置を独自にとるなど、児童ポルノ対策の取り組みを行っている。

 

サイバーインシデント対応者とのグローバルな対話

CERT(またはCSIRT)はよく消防団に例えられるが、サイバー攻撃の未然防止および発生時の被害軽減のために対応するチームであり、システムの脆弱性への対応による予防、サイバーインシデントに関する調査と情報共有による警告、事故発生後の対応などを行っている。JPCERT/CCが報告を受けるインシデントの数は年々増加しており、2022年度は2019年度の3倍以上となっている。JPCERT/CCが積極的に関わっている国際連携活動に、世界規模のCERTコミュニティであるFIRSTや、アジア太平洋地域のAPCERTなどがある。京都のIGF2023では、2つのセッションを開催する。WS#396で、増えつつある国家によるサイバー犯罪に対応するため、グローバルなCERT間連携の重要性について議論する予定。また、ネットワーキングセッション#44では、サイバーセキュリティに関心がある人のネットワーキングを目的として、参加者の気軽な会話を促す場所を提供する予定。

 

ビデオオンデマンドに関する規制

容量の大きいコンテンツを配信するのに必要なネットワークを提供する通信会社の負担を、コンテンツ事業者にも公平に分担してもらうべきではないか、というFair Contribution(ネットワークのコスト負担の公平性)の議論について、米国FCCやEUではその考え方に肯定的であるようだが、日本ではまだ議論があまり進んでいない。また、グローバル動画配信サービス企業に対し、自国のコンテンツ(文化・産業)保護のため、特に欧州や英連邦などで規制を課すようになっており、ローカルコンテンツへの貢献に関する議論への関心も海外では高まっている。一方、日本では、無料広告型の放送事業が主流で、有料型の放送事業がメインではないこともあり、日本の放送事業者はあまり打撃を受けていない。さらに、日本の視聴者は米SVODと契約して欧米のコンテンツよりも日本のコンテンツを見ており、ローカルコンテンツ保護規制の必要性が低い。しかし米国で無料広告型FASTが最近ブレークしており、今後の動向を注視するべきである。


 

Day 2

AI戦略をめぐる国際的な議論

AIについて、国内外の規制や技術的な動きなどについて紹介し、3つのポイントについて登壇者による議論が行われた。1つ目のAIとリスクについては、既存の法律で対応できないものは何なのか、人間ではなくAIであることで追加的なリスクは何かをきちんと整理する必要があるというコメントがあった。2つ目の相互運用性については、変化の速い時代において規制にすべて書き込むアプローチではなく、「アジャイルガバナンス」の考え方が重要という指摘に賛同意見が多く出された。3つ目の関係者と責任については、AIはブラックボックスという特有の性質から責任の所在が分かりづらく、情報提供のためのインセンティブ付けや、全体での責任分担設計が重要であるというコメントがあった。

 

発展途上国の開発に寄与する、信頼できるデータ流通構築に向けての課題と機会

Data Free Flow with Trust(DFFT)の背景、そして課題とベネフィットについて解説があった。データを安全に信頼できる形で国内外で流通させる事を可能にすることで、例えば自国にあるデータを匿名化した後にリソースとして提供したり、海外にある先進的なICTリソースを使えるようになる事など、発展途上国ではDFFTによりさまざまな恩恵を受けられることについての言及があった。一方で個人情報保護、サイバーセキュリティやデータ寡占にたいする懸念なとの色々な課題もある。大きな懸念としてはデータ流通に関する国際的な議論に発展途上国がなかなか組み込まれていない現状がある。発展途上国の声も積極的に含む形で今後の制度構築・運営などをどうしていくべきか、またDFFTを開発の文脈でどのように使っていくか、IGF京都では幾つかのクリティカルな質問を用意し、パネリストを含む色々な参加者と議論を行いたい。是非セッションに来場してほしいとの言葉でセッション紹介が締めくくられた。

 

社会的、経済的、環境的責任を担うキャンパス/IoTに関するグローバルな成功事例

IGFの2つのセッションを紹介。まず同じ考えを持つメンバーが活動するDynamic Coalition #9では、ネットに関連する色々な製品・部品(IoT)のセキュリティ、倫理をどうしていくかということについてGood Practiceを共有しつつ、さまざまな問題をメッセージングしていく予定とのこと。もう1つのセッションであるOpen Forum #159では、World Economic Forumの活動の1つでGlobal Smart Cities Allianceというものがあり、そこではプラクティスを共有しながらどのようにスマートシティを作っていくかを検討しているが、スマートシティは通常、ステークホルダーが非常に多いが、大学のキャンパスではステークホルダーの数が少なくプロジェクトを進めやすいため、アライアンスではキャンパスにフォーカスして活動を加速させていこうとしており、その取り組みについてIGF京都で紹介する予定。