マルチステーク・ホルダー・モデルの成立条件を考える

~GDC、WSIS+20以降のインターネット・ガバナンス~

  • 開催日時:11月7日木曜日16:05-17:05 
  • モデレーター:上村圭介[学術](大東文化大学)
  • パネリスト:
    • 西岡 洋子[学術](駒澤大学)
    • 前村 昌紀[インターネットの技術コミュニティ](JPNIC)
    • 山中 敦之[学術](神戸情報大学院大学)

 

インターネットが直面する課題は、複雑化し、また高度化しており、その解決には、多様な知識や技術、資金、そして権限が求められる。異なるステークホルダーがもつさまざまな資源を集約し、課題の解決を目指すことが、インターネット・ガバナンスにマルチステークホルダー・モデルが求められる理由の一つとされてきた。

もう一つの理由としてしばしば挙げられるのが、当事者としての関与である。インターネットは、誰にとっても不可欠な存在で、そこからの影響を誰もが同じように受けるというということが、インターネット・ガバナンスに、市民社会を含む多様なステークホルダーが関与することが必要であることの理由とされてきた。

このようなマルチステークホルダー・モデルは、インターネット・ガバナンスだけでなく、環境問題や核軍縮などの分野でも、重要な役割を占めている。このようなことを考えると、他の分野にもマルチステークホルダー・モデルが広がっていく可能性がある。さらに踏み込んで考えれば、マルチステークホルダー・モデルは、これからのデジタル社会における合意形成の中で重要な役割を果たす可能性がある。

その一方で、マルチステークホルダー・モデルの役割が拡大する中で克服しなければならない課題も少なくない。

まず、マルチステークホルダー・モデルは、どの国・地域でも同じように機能するものとは限らないことである。マルチステークホルダー・モデルに基づく合意形成の発展のペースには国・地域による違いがある。また、これまでIGFが扱ってきた課題の中には、マルチステークホルダー・モデルによく馴染むものと、そうでないものがある。インターネット規制やセキュリティなどの分野で、それは顕著であると思われる。さらに、意見集約や合意形成では、マルチステークホルダー・モデルがそれなりに形になるとしても、その成果の実施や実行となると、ステークホルダーの間に影響力の差がある。マルチステークホルダー・モデルが、伝統的なプロセスの隠れ蓑に終わってしまうことも懸念される。

このように、マルチステークホルダー・モデルがデジタル社会の民主的な合意形成における重要なツールになるには、克服しなければならないさまざまな課題がある。本セッションでは、これらの課題が今後克服できるのか、克服できるとしたらどのように克服できるかを論じる。