冒頭、本セッションを企画した会津泉(多摩大学情報社会学研究所)が、以下を発表した。「1992年の米国大統領選で当選、翌年発足したクリントン=ゴア政権は、インターネットの普及政策を強力に推進した。以来、世界中、国の発展にはネットに接続し、最新の技術・知識を獲得することが必須との認識が広がった。つまり、インターネットは、国際政治・ガバナンスの状況と緊密に関連している。そのネットの重要性を的確に認識し、強力に推進したのが中国政府・共産党だ。ネット、宇宙分野などハイテク分野の人材と産業を、国主導で育成推進してきた。昨年、中国の「デジタル文明対話」会議に参加したが、中国はAIもきわめて強力に推進している。他方、インターネットガバナンス分野での日本の存在は大きく低下し、タイ、インドネシア、ネパールなどの活躍が目立つ。」

  続いて上村圭介氏が、「2000年のG8九州・沖縄サミット以降、言語・文化をめぐるデジタルデバイド問題に興味をもち、ガバナンスの視点からインターネット、ドメイン名の価格・制度などに関心をもって研究した。グローバルIGFを受けて、各国でのガバナンスの取り組みも研究し、アジアに関心をもつ。」とコメントした。

  加藤幹之氏は、「IGFにビジネスの立場からかかわり、4月から国際経済研究連携推進センターというシンクタンクの所長として、アカデミックな政策研究に取り組んでいる。この20年、アジア諸国は大きく発展したが、日本は停滞し、AIリテラシーでは韓国に大きく遅れ、デジタル収支でも大きなマイナスを続けている。日本の再生にはイノベーションの促進が必須だが、IGFは海外から学ぶ場、国際的な仲間作り、ルール作りに有意義な場だ」とコメントした。

続いて参加者が、以下の意見を出し、上村氏、加藤氏がまとめのコメントを行って終了した。

「日本でも、30代ぐらいのメンタリティは相当変わり、主張をするようになり、期待したい。日本のアニメ、文化はグローバルに評価されている。そのアドバンテージをフルに使えると期待したい」(JPNIC前村昌紀氏)

「日米構造協議以来の歴史を受け、気になるのは、働きたい人が働けない状況があるのではないか。教育で頑張るしかない、情報を知ることから」(JAIPA立石聡明氏)

「アメリカも日本も中間層は没落している。若者も日本に魅力を感じないのではないか。インターネットで国境の壁が取り払われ、富裕層と貧困層の格差も含め、目に見えない壁ができている」(IoT-EX小畑至弘氏)

「アジアと比べても、日本の若者には英語の壁が大きいのではないか」(慶應義塾大学ルーク・コリー氏)

「小さくても、リファレンスモデル、プロトタイプをつくれたよいのでは」(オンライン参加者)

「日本の技術者ばかりが参加し、公共政策の関係者がいない。英文科に行くような女性にも働きかけたらよいのでは」(会場参加者)

「英語だけでなく、技術以外の分野の人が必要だろう。得意分野で勝負したほうがよい」(上村氏)

「究極的には教育だという話が多かったが、日本の若い人たちが海外のAIに取り組んでいる若者と直接交流、肌で感じる環境を作ることが課題だろう」(加藤氏)

 

(文責:会津泉)