日本インターネットガバナンスフォーラム 2024 セッション報告書
提出者: 大谷 亘 (一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)
セッション名
Advancing the security of today's critical infrastructure - A look into RPKI, QKD and IoT in internetworking architectures
登壇者
モデレーター
- Wataru Ohgai [Technical Community] (JPNIC)
パネリスト
- Nicolas Fiumarelli [Technical Community] (MANRS Steering Committee Member)
- João Moreno Falcão [Civil Society] (Researcher at IS3C)
- Michal Krelina [Private Sector] (QuDef BV)
セッション概要
本セッションでは、RPKI (資源公開鍵基盤)・QKD (量子鍵配送)・IoT Security (モノのインターネットにおけるセキュリティ) といった話題を中心に、インターネットの重要インフラを保護するためのセキュリティ技術について、技術的な観点を交えながら、国内・グローバルの現状について説明や議論を行った。 本セッションは、IGF2024 WS #198 "Advancing IoT Security, Quantum Encryption & RPKI" の前座としての役割も果たした。
最初に、Krelina 氏から QKD に関する説明が行われた。 一般に一緒くたにされがちな「量子コンピューティング」「量子鍵配送」「耐量子暗号」などの専門技術がどのような役割を果たすのかの概説の後に、QKD の重要性や応用の可能性について説明があった。 モデレータとの議論では、特に日本の環境に特化して QKD 先進国としてこの技術を実用化・商用化できる可能性などについて触れられた。
次に、Fiumarelli 氏から RPKI に関する説明が行われた。 現状の RPKI への普及率や、RPKI を用いて実際に経路を保護するための技術である ROA・ROV・ASPA について説明があった。 特に量子コンピューティングの発達による既存の RPKI への懸念について、RPKI が普及途上の現在に耐量子暗号技術を導入することで将来的な安全性が高められる可能性について議論された。
最後に、Falcão 氏から IoT Security に関する説明が行われた。 現在の IoT の普及・コモディティ化に関する分析の後、これをより安全にするためにセキュリティの標準化に力を入れる必要性について説明があった。 標準化によりより安全になるだけでなく、相互運用性による技術の発展への貢献などの観点からも議論が行われた。
会場からは、技術の専門家が IGF の場において政策立案者と共に議論できた本セッションの重要性を指摘する意見や、技術の専門家でなくても共に議論するために専門用語などコミュニケーションの相互運用性についての重要性を指摘する意見が上がった。
本セッションでは総括して、各セキュリティ技術を専門とするユースの登壇者を海外から招いて議論することで、日本のインターネットガバナンスの場に対して新たな観点での刺激を与えることができた。 また、実際に各要素がインターネット全体の安全性に与える影響を理解し、実際の政策立案の場でどう扱えばいいか議論するきっかけを作ることができた。