【セッションレポート】地域インターネットレジストリ機構の再検討:設立認定要件の改定議論

  • 開催日時:  2024年11月6日水曜日(Day 2) 14:45-15:45
  • モデレーター:前村 昌紀 JPNIC[技術]
  • パネリスト:
    • 谷脇 康彦 IIJ[ビジネス]
    • 白畑 真 BBIX Singapore[ビジネス]

このセッションは、インターネットのIPアドレスを始めとする番号資源の管理に責任を持つ、5つの地域インターネットレジストリ(RIRs)の連合体、Number Resource Organization(NR0)が検討中の、ICP-2(Internet Coordination Policy 2)新RIR設立要件の改定に関して、10月に公開され意見募集中である原則案を紹介した上で、パネリストや会場の参加者と議論を進めた。

冒頭、前村から改定ICP-2原則案を一通り説明した上で、パネリスト2人の発言に移った。谷脇氏は、ICANNが制作した「デジタルガバナンスの3つのレイヤー」図を元に、インターネット基盤に関する狭義のガバナンスと、インターネット社会に関する広義のガバナンスという峻別を示したうえで、内閣府の「マルチステークホルダー・プロセスの定義と類型」というドキュメントが指摘している、マルチステークホルダープロセスの適用に適したケースを例示し、対話が不可能なほどに対立が発生しているケースには不向きであることを中心に、自身の考えを示した。

続いて白畑氏は、1)RIRsはデータエスクローを制度化しているか 2)NIRではこの議論のようなことが起こらないのか 3) RPKIの普及によって、RIR自身の執行力が高まるため、RIRのガバナンスは今までに増して重要になる 4) IPv4アドレスが金銭的価値をはらむ中、RIRにおけるチェック&バランスや紛争処理の必要性は高まるため、gTLDを扱うICANNはこれに早期から取り組んでおり、参考になろう、といった指摘を行った(紛争処理機構の不在に関しては谷脇氏も自身の発表の前に指摘していた)。これらに前村から事実関係や自身の考えを示したうえで、参加者も交えた議論に移った。

議論では、市場が発展していくにつれて機構の拡充が必要であること、グローバルインターネットの運営機構が法人設置国の法管轄の影響を受けることに対する懸念、認定取り消しがライフサイクルに定義される上でのデータエスクローの必要性などが指摘されるとともに、法管轄の問題に関しては、APNIC、AFRINIC、ICANNの過去の例が共有された。