日本インターネットガバナンスフォーラム2024 Day 3

  • モデレーター:加藤 幹之[ビジネス](CFIEC)
  • パネリスト:
    •  小畑 至弘[ビジネス](IoT-EX株式会社)
    •  恩賀 一[政府](総務省)
    •  上村 圭介[学術](大東文化大学)
    •  立石 聡明[ビジネス](JAIPA)
    •  谷脇 康彦[ビジネス](IIJ)
    •  ルーク コリー[ユース・学術](慶應義塾大学)

セッション要約

IGFの意義と日本国内の活動

日本IGFは国連のインターネットガバナンスフォーラム(IGF)の精神を反映し、マルチステークホルダーでインターネット問題を議論する場である。以前から日本国内でも活発な議論が行われているが、活動は未だ限定的で参加者層も狭い。アジア諸国と比べても積極的な活動が見えなくなってきている。

対象の拡大

インターネットガバナンスからデジタルガバナンスへ範囲が拡大しており、データガバナンスおよびAIガバナンスの議論では広い意味でデータのあり方というものに関わっている。サイバーセキュリティーも密接に関連していて、とりわけデータの一貫性を維持するという議論の比重が高まってきている。それらに対応するために、議論の範囲を広げるために、外部のコミュニティとの連携・対話が重要なのではないか。インターネットの基本精神というのは、自律・分散・協調で緩やかな合意で成り立っているが、自由主義対権威主義国家などの問題が加わり比重が高まってきており、議論の置かれている状況が複雑になってきている。ではどうすればよいかというと解はないが、問題意識の共有が重要なのではないか。さらに、インターネットコミュニティの人はよく知っていても、外部の人は知らないことが多くあり、何が起きているかを広く知ってもらうことからアウトリーチを始める必要がある。
話題を拡大するために外の人を巻き込むには、その人たちの声を国連の場に伝えたい、という流れを作りそこに載せていく必要がある。

参加者の限界

日本の場合は主に技術者が活動の中心で、他分野(国際政治や国際関係など)の専門家や若年層の参加が不足。日本人の海外参加が少なく、国際的な経験不足も課題であるので、経験・機会の提供から始めるべき。フェローシッププログラムで支援を受けた後、会社に入ってそのまま貢献できるか、次のステップができるのか。欧米だとビジネス系の人も多く、議論の中心がAIやコンテンツ系になってきた中、フォーカスや議論が広がっていくのでは。
模擬国連など、国際関係に興味を持つ人たちに知らせてあげると、海外の人と議論を戦わせたいがテーマが見つかっていない場合もあるだろうから、反応があるのではないか。大学でインターネットガバナンスを何年も教えてきたところ、学生から行ってみたい、見てみたいという反応が増えてきたように感じている。

活動資金と法人化の必要性

現状はボランティアベースでの活動に依存しており、持続的な活動には限界がある。若者を海外に連れていくにはどうしても費用が掛かるので、そのための資金補助が必要。法人化により資金調達やサポートを強化することが提案されており、検討が続けられてきているが、まだ設立には至っていない。若手確保という観点からは、コア人材として仕事でインターネットガバナンスに取り組める人がコミュニティの中にいないといけないと考える。ビジネスをしている人たちがこの法人に投資が必要と理解してもらうことが重要なので、営業してその人たちに働きかける必要がある。

市民社会の欠如

日本では市民社会の参画が他国に比べて弱く、個人としてのインターネットガバナンスへの意識が希薄。所属団体は民間セクターや技術コミュニティだとしても、各人は一市民として市民社会という形で考える枠組みを作る必要があるのではないか。もしくは市民社会の枠組みに該当する人たちを勧誘(つまり営業かもしれないが)する必要がある。